私は私 ~ 自分なんて価値がないと思っているあなたへ ~
「こんな私でいいのかな?」
「私なんて価値がない」
「自分のことが好きになれない。」
「やりたいことがみつからない。」
「どうも生きにくい。」・・・etcに悩んでいる方、苦しんでいる方に
翻訳家のニキリンコさんの言葉を紹介します。
たまたま見つけた本の訳者あとがきに書いてあった言葉です。
少し長いですが、良かったら読んでみてください。
私は就職したことがない。
アルバイトをしても長く続いたことがない。
どこへ行っても上司の指示が理解できず、物が運べず、お金が数えられず、制服のボタンがとめられず、電話に出られなかった。
学校を中退してからは、理由をきかれるのが怖く、面接にも行けなくなってしまった。
同級生は卒業して就職していくのに、アパートに閉じこもって悶々とする毎日。
どうして自分は何をやってもだめなんだろう。
それに、仕事や対人関係がだめだと、どうしてこんなに肩身が狭いんだろう。
不器用な人の許容されない世の中なんて。
まともに働ける人間にもなりたいが、こんな世の中も変えたい。そう思って市民運動やボランティアを始めた。
そこでは、参加者たちはそれぞれの得意な作業に名乗りをあげていた。
印刷のできる人が印刷をし、お金に強い人が会計を担当する。私の知らなかった発想だった。
同級生たちは
「いったん入社したら、どこに配属されようと、なんでもこなせるようでなきゃ」
と言っていたのに。
私がよく任されたのは、「文書を書くこと」だった。
文章なら家でゆっくり書けばいいから、現場であたふたしなくてもすむ。
文も読みやすいと喜ばれた。
でも、何を書くべきで、何を省略していいか判断する力はなかった。
集会の報告を書くと「わからない」と言われてしまう。
読者は何を知りたがるかわからないのだ。
世に訴えたいことはある。
文章も書ける。
だが内容の取捨選択はできない・・・。
その後、さまざまな紆余曲折を経て、
「内容を自分で作れないなら、既成の洋書を紹介し、翻訳する手がある」
と気づき、初めて単行本を下訳したのが大学をやめて十年後。
生まれて初めて「半年以上続いた」のが翻訳だった。
結局「自分にもできる仕事」を見つけるのに、十年よぶんにかかってしまった。
なんでもこなさなければなどと思わず、最初からできることを探していたら、遠回りせずにすんだのに。
まだまだ駆け出しでいつまで続くかわからない私だが、幸い、仕事がつまらないと思ったことは一度もない。
昔はあんなに尊敬していたはずの
「ちゃんと卒業して、就職していった人たち」が
「仕事に意義が感じられない」などと訴えるのを聞くうち、私は気づく。
彼らも私も、同じ神話に縛られていたのだ。
「仕事は苦しいもの、がまんするもの」という神話に。
私はできないことだらけであきらめてしまったおかげで、
「せめてやりたいことをやろう」
と考えることができたが、
なまじ力のある彼らにはその機会がなかったのだろう。
~ 引用ここまで ~
できないことも才能です。
「あれもできない、これもできない・・・。
でも、これならできる。」
できないことが多ければ、自分のダイヤモンドの原石が見つけやすくなります。
ニキリンコさんは言います。
「なんでもこなさなければなどと思わず、最初からできることを探していたら、遠回りせずにすんだのに。」と。
「私は私」、「あなたはあなた」。
必ず、あなたにもダイヤモンドの原石があります。
探してみてください。
そして、自分のことを好きになって、自分のことを大切にしてください。
ニキリンコさんの紹介。
ニキリンコさんは幼い頃から周囲との違和感を覚えながら育ち、大学を中退。
その後、心の問題に興味を持ち、英文の文献を多数読むうちに翻訳の仕事に出会います。
30歳代で初めてアスペルガー症候群と診断され、更に高機能自閉症を患っていることを公表。以後、これをテーマに翻訳、執筆、講演などで活動している。